某ポータルサイトで漫画原作の仕事をすることになりました。まだまだ企画段階ですが、気合いは十分。シナリオ形式ではなくネームまで切ってやろうかという勢いです。絶対に失敗できない企画なので胃がキリキリと痛みますが、いよいよとなればアルコールとおクスリの力で乗り切ってやろうと思います。
さて、漫画といえば、その昔あのモンキー・パンチ先生にお会いしたことを思い出します。
某学校のインターネット広告の取材で、講師としてマンガ・アニメーションを教える先生の立場から、マンガの奥深さやアニメの将来性について語ってもらおうという企画でした。広告なので主題は学校のPRですが、ぶっちゃけそんなことはどうでもよく、ただただ自分の興味を優先して漫画の技術論ばかり質問していた覚えがあります。(テープ起こしのとき驚いた)
コマとコマの“間”を埋めるのは難易度が高い
いろいろとお聞きしましたが、最も鮮明に覚えているのがコマ割りの役割について。
好きな漫画がアニメ化されたとき、何かしからの違和感や物足りなさを感じたことはないでしょうか。なーんか、違う・・・みたいな。
先生によれば、それはコマとコマの“間”がアニメ監督の主観で埋められたせいです。
当然ながら、漫画は人によって読み進めるスピードが違います。セリフを中心に流し読みする人もいれば、背景などにもじっくり目をやりながら読み進める人もいます。
このときの”間”をあける機能を果たしているのがコマとコマにある空白の部分。この空白が、次のシーンに目を移すまでの”読者にとってベストな間”を与えているのだと先生はおっしゃいます。
自分のテンポで読み進んでいける漫画と違い、アニメは監督が好きなテンポで話が進んでいく。
これ、実はすごく基礎的なことなのですが、当時はとても興味深かったです。アニメでのがっかり感の正体はこれだったのか!と。私的に最もがっかりするのがギャグ漫画のアニメ化なのですが、なるほど確かに、間が合わなかったら笑いも半減するなと。
「漫画って、奥深いでしょう」
そう話しながら、優しく、嬉しそうに笑うお顔が印象的でした。
「サインください」は絶対禁止
こんな感じでインタビューは無事終えることができましたが、先生が登場する前はピリピリした空気が流れていました。有名人であり、大切な講師であるモンキー・パンチ先生に失礼があってはならないと、広報担当者がプレッシャーをかけてくるのです。縁無し眼鏡をかけた神経質っぽい方で、眼鏡をきらんと光らせては、
「失礼のないようにお願いしますね」
「サインを求めるとか止めてくださいね」
等と念押ししてきます。
なので、同行したカメラマンさん(お調子者)にも釘を差し、僕自身もネクタイを締め直して取材に挑みました。
ところが、このやり取りを聞いてなかったのが遅刻してきた営業マン。取材が終わるやいなや、
「先生、サインください!」
こいつ……。
というか、アンタの担当クライアントなのに、下手すりゃ契約おわったな・・・。完成した原稿は引き継ぎの営業さんとやり取りだな・・・。
なんて瞬時のうちにいろいろ想像を巡らせていると、
先生「はっはっは・・いいですよ~」
営業以外の全員「!!!!!!!!!!!」
え?!いいの?いいんですか?!
あれだけ念押しされてたのは何だったんだ。思わず広報担当者の顔をみる僕。
「ま、まあ今回は大目にみましょう・・・」
顔を引きつらせながら眼鏡をなおしています。
それを聞いたカメラマンさん、すかさずサイン色紙を取り出し、
「あの、僕もいいですか?!」
くっ!色紙を鞄にしのばしているとは、なんて用意周到な人だ。
先生「はっはっは、いいですよ~」
広報「ま、まあ大目に見ることにしましょう」
私「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、あのー・・・・・・・・・・・・・」
「じゃ 私も・・・・その・・・」
「サイン・・・・」
再びきらんと光る広報担当者の眼鏡。
先生「はっはっは、いいですよ~」
神だ、この人は神だ。
もちろん色紙なんてなかったので、慌ててシステム手帳を拡げて手渡しました。
サインとともにサラサラッとルパンの顔ができあがっていきます。
「はい、どうぞ」
何の変哲もなかった私の手帳が、ルパンと先生のサインが描かれたことにより輝いて見えました。
これがプロの力。魔法。
でも先生。
ぼく本当は次元大介が欲しかったです。
言ってたら、どうなってたんだろうなあ。
さいごに
肝心の手帳をアップしようと思いましたが、どこにしまったのか行方しれず……。見つかり次第アップします。
あ、そういえば、ルパンは構想段階では長髪だったのですが、毎回描くのが面倒そうということで、今の坊主頭になったそうです。
以上、取材時の貴重な思い出でした。原作頑張ろう。