「ライターたるのも、自分の得意分野を持つべきである」
フリーランスでも会社員でも、ライターの職に就いている人なら誰でもそう言うでしょう。理由は簡単、編集者は、自分たちに書けない原稿を求めているからです。
管理人も少し編集の仕事をしていましたが、編集者もちょっとした原稿なら自分で書くことがあるんですよね。私の勤め先は小さかったこともあって、私が編集者兼ライターを務めることもよくありました。しかし、私には書けない専門的なテーマ、そのときは「医療」でしたが、これは医療ライターの出番です。お願いしてみるとさすがに慣れたもので、ドクターへの取材では録音もせず簡単なメモだけで原稿を仕上げてきました。
こんなふうに、得意分野を持つことは「洗練された武器を持つこと」と同義です。
「なんでも書きます!」なんて、道端に落ちている棒切れを振り回すライターより、代用の効きにくい切れ味のある刀を携えているライターの方が魅力的に映るに決まっています。ジャンルを問わず仕事を取りに行く姿勢は大切ですが、セルフプロデュースのためにも、なんらかの強みは掲げた方がいいと思います。
結果的にオールジャンルを選んだライターたち
もちろん、世の中にはオールジャンルで活躍するライターもたくさんいます。私も(活躍はしていませんが)どちらかといえばオールジャンルです。では、そうしたライターが得意分野を持っていないのかというと、そうではなく、必ず何かしらの武器を持っていて、それも活かしながら結果的にオールジャンルで仕事をしているというパターンが多いです。まずは得意分野で編集部にファンを作り、それをきっかけに他ジャンルの仕事を取ってきた人も知っています。
したがって、タイトルの問いに答えるなら絶対に「イエス」で、食えるライターの条件は得意分野を持っていることだと明言します。もっとも、今ライターを目指している人は、得意分野を見つけていなくても慌てる必要はありません。ある意味なくて当たり前です。そういったものは、仕事を通して学んでいったり、人生経験を積んで覚えていくものですから、慌ててものにできる武器ではありません。
ただし「専門知識」は必須ではない
いきなり真逆の主張を展開するようですが、必要なのは「得意分野」であって「専門知識」である必要はないという意味です。冒頭で例に挙げた医療ライターのように、専門知識があるのは強みではあるものの、だからといって必須ではありません。特定の専門知識を身につけるために時間を費やすなら、ググる力を鍛えた方がよほど役に立つときがあります。
執筆に必要な情報をネットや書籍から拾い、見極め、整理する能力を磨けば、専門知識がなくてもいっぱしの文章が書けるようになります。むしろライターとしての総合力はこの方法で上げていく方が早く、コツをつかめば自分の引き出しをどんどん増やしていけます。どんなジャンルを頼んでも一定のクオリティで原稿を上げてくるライターは、この力をきちんと身につけている人であり、食えるライターはだいたいこの技術をものにしています。
調査して理解できれば、その分野に興味が湧いてくるし、好奇心も刺激されます。何度か執筆していくうちにそれが得意分野に変わっているかもしれません。得意分野にまで昇華できれば、自分の見解を原稿に盛り込めるようになり、内容に厚みや味わいが出てきます。
さいごに
得意分野以外にセールスポイントになる要素を上げておきます。
- 原稿が早い
- 締め切りを守る
- 誤字脱字がない
- 文章が巧い
- 取材が上手い
- 融通が効く
- フットワークが軽い など
上記のことが問題なくできるライターはそれだけで印象がいいです。「こんなの当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、当たり前のことができないのが人間ですから、誠実にきちんと原稿を上げてくれる人は、得意分野に限らず信頼できます。