晴れてピンク世界の広告営業マンから脱却した僕は、次の就職先として、希望通りのデザイン事務所でコピーライターをやることになりました。
え? ライター? そんな勉強してたっけ??
等と友人から問われたことがありますが、ええ、特にしていません。学校で学んだのはグラフィックデザインですから。
ただ、小説を書いていた姉の影響で文章を書くのは好きでしたし、大学教授から「日本語が上手いせいで英語が下手」と、褒められてるのか貶されてるのか分からない経験をしたことなどから、「文章なんてわざわざ学ぶことか?」という妙な自信がありました。
もちろん、面接はめちゃくちゃ緊張しましたが。
面接当日
退職は新しいところが決まってからと固く決意していたので、ピンク広告会社に勤めながら就職活動をしていました。幸い、ピンク会社の始業時間は11時~と遅め。よっしゃと出社前に面接をセッティング。2着で1万円のスーツに身を包み、数点の作品を持参しました。
会社は零細のデザイン事務所らしく、マンションの一室にありました。社員数は社長を合わせて4名で、社長以外は全員女性。このうち1名が退職するそうです。
僕は職種未経験者なので、とにかくやる気と誠意を見せることが大切です。もちろん、だからといって言い過ぎには注意しないと。面接官である社長は観察眼に優れたコピーライターです。
ウソはバレる。
必ずバレる。
そう考え、なるべく自然体で話したのを覚えています。
会話はそれなりに盛り上がりました。話しているうちに分かったのですが、この会社にはデザイナーがおらず(昔はいたらしい)、デザインの仕事が入れば外部にふっているといいます。
なら私が!ワタクシめが入社すればワタクシめが内部でやりますよ!と懸命にアピール。グラフィックデザインを学んだ学歴がここで役に立ちました。社長もやる気を買ってくれたようで、「ならどんな実力か見せてくれるかい?」という展開に。ハイ!こんな感じなんですけどね!と作品集を開く僕。
次の瞬間でした。
社長の顔が一瞬にして曇ったのは。
まあ要約して言えば、
「限りなく0点に近い」
という感想だったようです。さすがにそんな言い方はしませんでしたが、
「僕はデザイナーじゃないからちょっとよくワカランな…」
と、社長なりのオブラートに包んで酷評していただきました。僕のデザイン力が世間(プロ)ではどんなレベルに位置するのか、当時の自分はよく分かっていなかったため、この評価には結構狼狽しました。
雰囲気が一瞬にして盛り下がってしまいましたが、仕方がありません。それが自分の実力なのだから。そう言い聞かせながらデザイン事務所を後にし、ピンク会社に出社。すると相変わらずSさんが出会い系サイトに興じており、ケラケラ笑っていました。
早く脱出しないと本当にやばい……。
その2日後。ケータイが鳴ります。面接を受けた会社からだ!
「も、もしもし」
「・・・・・え?」
「もう一回、話がしてみたい?」
「そ、そうですか」
「ええ!もちろん行かせていただきます!」
意外や意外。てっきり落ちたと思っていたのに、急きょ2次面接が決定しました。嬉しかった。これはホントに嬉しかったです。
けど、なぜだろう。イヤな予感が頭から離れないのは・・・。
続きます。