害鳥の代表格として忌み嫌われているカラスですが、強いし、賢いし、カッコいいし、おまけに食べたら美味しくて栄養もあるらしいし(カリギュラ2「東野、カラスを食う」より)、あいつらを飼いならすことができたら人類にとってメリットしかないんじゃね?と昔から思っています。
しかしカラスに限らず、野生鳥獣をペットとして飼うことは法律で禁じられているため諦めるほかないのですが、「保護目的」なら飼育することが可能です。
ひょんなことからカラスの雛を保護し、結果的に飼うことになったのが、今回紹介する漫画の作者・犬飼ヒロさんです。
「悪いこと言わんからやめとけ」というご意見
猫に襲われたせいで一生飛べなくなったカラスの雛を保護することになった犬養さん。ほのぼのとしたコミックエッセイのなかで、カラスがいかにペット向きでないかが過不足なく伝わってきます。
その理由を要約すると次の3つ。
- くさい
- きたない
- うるさい
くさい
特に臭いは強烈で「洗ってもくさい」んだそう。墨汁とキュウリを足して2で割ったようなスメルがするそうです。
犬養さんが飼ったのはハシボソガラス(田舎によくいるやつ)ですが、ハシブトガラス(都会によくいるやつ)ならどうだったんでしょう。イメージだけで言うと、より臭そう。
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きたない
これは主にフン。カラスに限らず、鳥類は空を飛ぶときに身を軽くするため頻繁に排泄を繰り返す習性があるのですが、犬養さんが飼った「かぁ子りん」は、病気のためか、特によくフンをする個体だったっぽい。
「きたない」は「くさい」とも連動します。鳩のフンを浴びたことがある人ならわかるでしょうが、野生鳥獣のフンはマジで臭い。とりわけカラスは雑食でお肉も大好きですから、動物性たんぱく質や脂質が多く含まれているフンの臭いは半端じゃないでしょう。
ちなみに、ハシボソガラスは英語で「Carrion Crow」といい、「死肉を食うカラス」という意味。共食いもガンガンしますし、なんならカラスの天敵はカラスだそう。
そのせいか、カラスは黒色が大嫌いで、黒髪はもちろん、黒い服なんかも嫌うとか。それを知って「黒いくつ下干すぞー」とからかって遊ぶ犬養さんかわいい。
うるさい
鳴き声については、そりゃそうだろうな、という感想だったのですが、盲点だったのは仲間が集まってくること。ベランダでガーガー騒いでいたので注意しに行くと、同種のハシボソガラスが遊びに(?)きてビビったというエピソードが紹介されています。
人里離れた一軒家ならいざ知らず、普通の住宅街なら確実に近所迷惑で村八分喰らうでしょうね。作中にそんなエピソードは出てきませんが(「もしかしてカラス飼ってる?」と疑われてごまかした程度)、実際のところはどうだったんでしょう。
くさいし汚いしうるさいけど「めっぽうかわいい」
こんなふうに、犬養さんは「かぁ子りん」の世話で大変だったに決まっています。
「あたしカラス飼ってみたいんです〜」みたいな人が現れたときは、「悪いこと言わないからカラスはやめといたほうがいい」と助言しつつ、ノドまで出かかっていた本音は、
「よかったら差しあげましょうか!?」
でした。
とはいえ、相手がその気になったら本当に譲ってあげたとは考えにくいほど、犬養さんは「かぁ子りん」に愛情を注いでおり、「かぁ子りん」もそれに応えてとても懐いていたようです。
頭を撫でてと甘えてきたり、外出先から帰ってきたご主人様を「ワンワンワン」と犬の鳴き真似をして迎えてくれたり(同時期に飼っていた犬の声を覚えた)。とても頭がよく、感情豊かなので、鳥というより「犬や猫に感覚が近い」という表現を「あとがき」でされています。
だからこそ、「かぁ子りん」が永眠したときのペットロスは相当なものがあり、涙が止まらなかったそうです。僕はなぜか、犬養さんの漫画を通して、自分もカラスを飼った気になってしまっていたので、巻末で「かぁ子りん」の写真を見たときは涙が出そうになりました。
「こんな優しい人に拾われて良かったね」と、毒にも薬にもならない駄菓子のごとき感想で締めくくりたいと思います。