『息もできない(똥파리)』の김꽃비(キム コッピ)が主演という理由だけで観た映画。
POVのモキュメンタリーによるワンカット風の作品で(韓国での題名は『원컷』)、始めは「キム コッピ可愛いな〜」とか思いながらだらしない格好で観ていたのですが、物語が進むにつれ姿勢を正しました。クソがつくほどの低予算でも脚本と撮影手法を工夫すればこんなに素晴らしい作品ができあがるとは。
以下、タイトルのとおりネタバレでレビューします。
2014/日本・韓国 上映時間86分
監督:白石晃士
脚本:白石晃士
出演:キム・コッピ、ヨン・ジェウク、白石晃士ほか
韓国の障害者施設から、18人が犠牲となった連続猟奇殺人事件の容疑者の男が脱走する。その後、男から電話で呼び出された韓国人女性ジャーナリストは、いまはは廃屋となっているマンションである映像を見つける。そこには、男の独白とともに衝撃的な映像が収められていた。
幼なじみが完全に頭おかしくなってからんでくる
登場人物はこんな感じ。非常に少ないので覚えやすいです。
- ソヨン/ジャーナリスト。サンジュン、ユンジンとは幼なじみ
- サンジュン/殺人鬼。ソヨン、ユンジンとは幼なじみ
- 田代/カメラマン
- 日本人夫婦/新婚旅行で韓国にやって来た夫婦
- ユンジン/故人。幼いころに暴走車に轢かれて他界。ソヨン、ユンジンとは幼なじみ
殺人で指名手配犯中のサンジュンに呼び出されたソヨンとカメラマンの田代が、指定された廃墟のマンションに向かうところから物語は始まります。サンジュンは、幼なじみであり、ジャーナリストであるソヨンに「自分を取材してほしい」と依頼。その際、日本人のカメラマンを連れてくるよう指示します。
ソヨンと田代の会話は基本的に韓国語で、なぜかたまに日本語で話します。お互いの言語ができる者同士がちゃんぽんで会話するのはリアルでいい^^
サンジュンは、これまでの殺人はすべてユンジンを生き返らせるためにやったと話します。27歳の年に27人を殺せばユンジンが蘇ると。犠牲になってもらった27人もちゃんと復活するから心配ないと。そのように神が言っていると語ります。
今のところ25人までミッションクリア。あと2人はもうすぐここにやって来るので、殺害からユンジン復活までの一部始終をカメラに収めて映画化したいとのこと。世界中の人が感動するに違いないと信じて疑いません。はい、
かんっぜんに頭おかしい人です。
(やっべーこいつスピってる・・・)とドン引きするソヨンと田代。しかし、サンジュンの予言が次々に当たるので、偶然の重なりでは説明できないと思うようになります。
最後の2人がいろんな意味でクセモノすぎる
サンジュンが狙う最後のターゲットは「愛しあう2人」。神の声によれば、窮地に陥っても愛を貫く2人を確認することが大切なんだそう。加えて殺す際は、ターゲットの目印である「首にある大きめの痣」を確認すべし、とのこと。
サンジュンは、このマンションに日本人の夫婦がやってくることを予言。田代はカメラマン兼・通訳のために呼ばれたのですね。そして予言どおり日本人夫婦がやって来ました……見るからに悪そうなのがw
こいつらはとにかく好戦的。背後からバットを喰らってもしばらくしたら反撃してきます。劣勢に陥っても絶対に降参せず、むしろ悪態をつきまくります。負けそうになったサンジュンは、
「お前の女房に酷いことされたくなければ、首をくくって自殺しろ」
と命令。酷いことってのはこういうことです↓(予告途中から再生)
常人ならここで怯むのでしょうが、サンジュン最大の誤算がここにあり。実は嫁のつかさは、拘束されている旦那に見られながら犯されるシチュエーションに憧れを持つど変態だったのです。
「夢が叶ったなあ つかさwww」と煽るだけでダメージゼロの旦那。引っ込みがつかなくなって童貞を捨てるサンジュン(3〜4回のピストンで昇天)。果てて無防備なサンジュンに、だいしゅきホールドからの耳食いちぎりで技ありを取るつかさ。わいせつ行為中は終始背を向け「안돼〜 안돼〜」しか発しないソヨン。作中最もカオスなシーンでした(笑)。
見かねた田代が裏切ったことでかなりの反撃に遭うサンジュンでしたが、なんとか夫婦の殺害に成功。しかし首を確認すると……目印の痣がありません!
ソヨン「痣なら…私の首にあるわ。ユンジンが死んだ後できたの」
ソヨン「それと、さっき見えたけど、あなたの首にも痣ができてるわよ」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
最後の生け贄は、ソヨンとサンジュンだったのです。え? でも二人は愛し合ってないよね?というツッコミはこらえましょう。
ユンジンは蘇るのか? 神のミッションクリア後
すまないすまないと泣きながらソヨンを手をかけ、自らは屋上からのダイブでミッションクリア。このとき、異空間から悪魔の触手のようなものが現れます。これが”神”か……。
飛び降りたと思った瞬間、サンジュンはユンジンが亡くなる前にタイムトラベルしていました。なるほど、ユンジンが生き返るのではなくて、死なせないようにするってことね。ユンジンが死ななければサンジュンが殺人を犯す理由もなくなり、犠牲になる人々もいなくなるという理屈です。
しかしこれ、パラレルワールドなので、もとの世界はなにも変わらないと思うんですが……。ともかく、サンジュンは子供時代の自分、ソヨン、ユンジンを安全なところに避難させ、自分が身代わりとして轢死します。
数年後、大人になっても仲良しの三人組の前に、どこからか田代のビデオカメラが登場。ユンジンは取り憑かれたような眼差しでカメラを凝視したかと思うと、「よく分からないけど……サンジュン、ありがとう」と抱きつきます。もちろん、この世界のサンジュンにはなんのことかさっぱり。
「なにイチャついてんのあんたたち〜」とソヨンがちゃかし、遊びに行くところで物語は終了します。
神か悪魔か、暇つぶしに付き合わされたサンジュンの運命
サンジュンはパラレルワールドで死亡したので、こっちに魂があるとすれば最高のグッドエンドです。ユンジンの「ありがとう」を聞けて号泣してるかも。ただし元の世界で被害に遭った人にとっては迷惑千万であり、たとえ元気なユンジンを見ても「よかったな〜サンジュン」とは言わないはず。ソヨンだって同じでしょう。
その意味では、サンジュンにお告げを送信していた”神”は何がしたかったのか分かりません。暇を持てあました神々の遊びだったのでしょうか。