随分前に観た映画ですが、先日テレビでやっていたので再度じっくり鑑賞。B級ホラー臭がぷんぷん漂っていて個人的に大好きです。
タイトルは、フレディVSジェイソンや、エイリアンVSプレデターを意識または便乗したのでしょうか。不死身で無敵の富江がもう一人の自分とどのような肉弾戦を繰り広げるのか?期待していましたが、戦うのはオリジナルの富江ではなく、彼女の不出来な「コピー」2名という設定。
コピーは人間と富江の遺伝子が混ざった半妖怪のような生物で、時間が経過するにつれ肉体が崩壊するという弱点を持っています。治療薬はただ一つ、オリジナルの富江の血液。
そういうわけで、2人のコピーは相手がオリジナルであると信じて互いに命を狙う関係にあり、それに周囲の男たちが振り回される。まあ大雑把に要約するとそんなストーリーです。
2007/日本 上映時間86分
監督:久保朝洋
脚本:久保朝洋
出演:あびる優、八戸亮、松岡恵望子 ほか
男たちを惑い狂わす美少女、富江の恐怖を描く人気シリーズの完結編。あびる優演じる富江が、自身の細胞から生まれたコピーの富江と壮絶な死闘を繰り広げる。
主な登場人物
富江が3人も出てくるのでちょっと整理しましょう。まずは、主人公「梅原」(後述)の職場の男たちを手玉に取るコピー富江A。あびる優さんが演じています。
富江らしい妖艶な魅力がただよい、個人的にはドンピシャの役。赤が非常によく似合う。以下、『あびる富江』とします。そして、あびる富江をつけ狙うコピー富江B。梅原の職場の先輩(三浦誠己)を操っています。
セクシー系のあびる富江とは対照的に清楚な印象。男に人気があるのはこちらのタイプか。以下、『えみこ富江』。
オリジナルの富江ですが、これはあびる優が1人2役で演じています。
■主人公「梅原」
マネキン工場で働く真面目な青年。何者かに惨殺された恋人「尚子」を忘れられず、あびる富江でさえも受け入れませんが、あびる富江が尚子の生き写しであることから、徐々に心を解放していきます。
あびる富江VSえみこ富江 〜ただの女子同士のケンカ
互いの奴隷(男)たちを利用して、やっと両者がご対面。どんな対決が見られるのか?!と思ったのですが、よく考えてみると、富江って『リング』の貞子や『呪怨』の伽椰子と違って戦闘タイプじゃないんですよね。相手を瞬時に葬り去るような特殊能力はありません。あるのは殺しても必ず蘇る再生能力。『100万回生きた猫』みたいに何度死んでもしれっと生まれ変わります。
ただし、それができるのもオリジナルであるからこそ。コピーの2名はそこまで完璧ではなく、えみこ富江は作中で「もう生き返れない」と発言しています。男を狂わせる魔性の魅力以外は生身の人間となんら変わらないわけですね。
つまり、作中の富江vs富江はただの女の子同士の戦いということになり、これはどう考えても
盛り上がる訳なし。
決着はあびる富江の勝利(決まり手:ガソリン漬けからの着火)。梅原が加勢してくれたこと、えみこ富江が幼稚な罠に引っかかるお馬鹿さんだったことが勝因です。
(あびるどこに行った!→こっちよ→あびるそこか!→深い穴の前に誘導される→後ろからどーん)
まあ、あびる富江は外見がオリジナルと瓜二つなので、勝因は遺伝子の濃さであると解釈しておきましょう。
えみこ富江があびる富江に始末される数分前、富江に魅せられた男共はバトルロイヤルで共倒れし、残る登場人物は梅原とあびる富江の2名。そこに、オリジナルの存在に詳しい謎のおっさんが加わります。
オリジナル富江とのラストバトル
謎のおっさんの正体は元小児科医。おっさんは富江コピーを量産したの張本人でした。彼は何十年間も富江を愛しては殺しを繰り返した結果、精神を病んでしまい、富江の血を女児に注入するという”復讐”に出たといいます。
絞め殺しても、切り刻んでも、焼き尽くしても、何度でも美しい姿で再生する富江。その富江と同じ容姿をした女たちが、コピーであるがゆえに再生できず、醜く朽ち果てていく。その様子を見て楽しんでいたと告白します。あびる富江を含む富江のコピーたちは、このおっさんの被害者だったわけです。
しかし、そんな復讐ももう終わりです。結局は富江の魔力から逃げられないおっさんは、もう一度富江を愛すことを望み、梅原に「戻ってきてくれ富江」と呼びかけます。
現状を把握していないのは梅原だけ。つまり、梅原が愛した、あびる富江にそっくりの死んだ尚子こそオリジナルの富江であり、尚子を殺害したのは梅原自身だったのです。ショックのあまり自己防衛が働き、記憶を書き換えていたんですね。
おっさんの悪行を聞いている間に、あびる富江の寿命が近づいてきます。実は余命いくばくもない状態だったようで、半身がゾンビのように腐っています。
もう助からないと悟り覚悟を決めたあびる富江。とりあえず隙を見て事件の根幹であるおっさんを刺し殺し、焼身自殺を図ります。
「あなたともっと一緒にいたかった」
「こんなふうに思うなんて…」
「でももうおしまい」
「地獄で待ってる」
梅原の地獄行きは決定してるんだね。
富江の魔力に抗える男はいないので、どちらかと言うと被害者だと思うのですが。
あびる富江の死によりすべてを思い出した梅原。そしてついにクライマックス。
梅原の体内からオリジナル富江が再生!
梅原に殺害されて以来、ずっと彼の体内に潜伏していたようです。コピーたちが自分の血を探し求めて力尽きるのを待っていたかのごときタイミング。炎に包まれてその様子を見ていたあびる富江は、もう何もできず、「と・・みえ・・」と残して力尽きました。
オリジナル富江の完全勝利で映画は幕を閉じます。
最後に
原作者の伊藤潤二氏は、本作が富江の映画シリーズで最高傑作であると評価しているそうです。私的にも賛成。物語の主題である富江vs富江の肉弾戦が、普通のかわいい女の子同士の殺し合いだったオチも評価しましょう。富江らしいといえば富江らしい。
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