「自転車が気軽な乗り物じゃなくなった」という趣旨の嘆きのツイートを見かけるようになりました。危険運転を繰り返す自転車利用者に安全講習を義務付ける改正道路交通法(2015年6月1日施行)を受けての反応です。
自転車の運転そのものを取り締まるルールが新設されたわけではありませんが、これまでは『注意』か、刑事罰を問われる『赤キップ』という落差の大きいペナルティしかなかったため、その中間に『安全講習』が追加されたという形です。
ポイントは、今回の改正に応じて取締が異常に強化されたという点。重箱の隅をつつくように違反者を摘発する警察の本気度が予想外すぎて、今まで気軽にルール違反していた自転車利用者が餌食になってしまいました。
改正法施行から1ヵ月、自転車利用者の意識が高まった(というより臆した)のは間違いないでしょうが、未だルールの浸透には至らず、違反者は続出しているといいます。そこで今回は、うっかり捕まってしまわないよう、今一度、やってはいけないことを整理してみたいと思います。
取締対象になる「危険行為」14
自転車運転者講習の対象になる『危険行為』とは次の14つです。
- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩行者用道路徐行違反
- 通行区分違反
- 路側帯通行時の歩行者通行妨害
- 遮断踏切立入り
- 交差点安全進行業務義務違反等
- 交差点優先車妨害等
- 環状交差点の安全進行義務違反
- 指定場所一時不停止等
- 歩道通行時の通行方法違反
- ブレーキ不良自転車運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
読んですぐ理解できるものもあれば、いまいちピントこないものもありますよね。特に注意したいものを選んで見ていきましょう。
信号無視
当たり前です。
しかし二段階右折する場合は意図しない信号無視に注意です。警視庁のホームページにも説明されていますが、ややこしければ、前方の信号に従えばいいと覚えておきましょう。
歩行者用道路徐行違反
自転車は車道を走るのが基本ですが、
- 車道が工事などで危険
- 自転車通行可の標識がある
- 運転者が13歳未満か70歳以上、または身体障碍者
の場合は歩道を走っても構いません。しかしその際は時速8キロ以下で徐行せよというのがこのルール。時速8キロとは、早歩き~小走り程度のスピードです。
また、歩行者を妨害するなという意味も込められており、警音器(ベル)の無闇な使用も禁じられています。本当に止むを得ない場合か、『警笛鳴らせ』の標識がある場所以外では鳴らしてはいけないということです。たまに意味もなくチリンチリン鳴らしながら走っているおっさんを見かけますが、ああいう輩は今回の施行を機に片っ端から取り締まられることを期待。
通行区分違反
不必要に歩道を走るのはアウト。前述した3つの条件下でないと通行区分違反になります。また、車道では左側通行が絶対のルール。車と同じ方向に向かって走れということですね。
車を運転するとよく分かりますが、逆走してくる自転車ほど怖いものはないので、命が惜しかったら通行区分は守りましょう。目的地によってはわざわざ対面に渡らなければならず、面倒くさいこともあるのですが。
環状交差点の安全進行義務違反
環状交差点? は? という感じですが、要は信号のない円形状の交差点のことで、車両は右回りで通行することが義務付けられています。
自転車も車やバイクと同様、環状交差点に入るときは徐行で左側に寄り、右回りに沿って通行せよということです。したがって、
- できるだけ道路の左端に寄ること
- 徐行すること
- 通常の道路から環状交差点に侵入するときは交差点内を走る車両を妨害しないこと
の3つを覚えておきましょう。
指定場所一時不停止等
一時停止の標識や赤の点滅信号では、きちんと足を付いて停止しないと危険行為扱いになります。もちろん停止線オーバーもダメ! 停止線オーバー=止まれず人や物に接触したと同義ですから、問答無用で取り締まられます。
歩道通行時の通行方法違反
やむを得ず歩道を走行するとき、自転車は通行指定部分か車道側を走らなければいけません。これも分かりやすいイラストがあったので引用します。
ブレーキ不良自転車運転
ブレーキ装置がない、または制動不良な自転車に乗っている者は情け無用で取り締まられます。これも当然!!ですね。
これは、「なんかブレーキのケーブルがカッコ悪くね?」等のバカげた理由でブレーキをはずす輩が増え、それが元で死亡事故や傷害事故が増えたことから、2013年11月の改正道交法で取締が強化された項目です。
ブレーキ無し派の人は、車やバイクのブレーキが効かないことに恐怖を感じないのでしょうか? まずは心のブレーキを踏む習慣を付けてもらいたい。
安全運転義務違反
他人に害を及ぼす運転はすべて取り締まるぞという項目。「他人に害を及ぼす」とはなんぞや?ということですが、代表的なのは、傘差し運転、携帯電話使用運転、2人乗り運転、そして話題のイヤホン等使用運転が挙げられます。
イヤホンの禁止については、片耳イヤホンならOKなど現場や管轄の警察官によって判断が分かれるそうですが、捕まりたくないなら止めておいた方が無難でしょう。「安全運転義務違反」という言葉が表すように、この項目は定義を明文化するのが難しく、現場の交通状況に応じて判断される例が増えていくと思われます。
イヤホンに限らず、判断基準が曖昧な行為で呼び止められると応戦したくなりますが、あなたが上岡龍太郎でもない限り勝ち目はありません。そもそも交通ルールを守らない己が悪いと自覚し、二度は繰り返さないと決意する方が前向きです。
違反するとどうなるの?
危険行為を繰り返し、3年以内に違反または交通事故を2回繰り返した14歳以上の者は、安全運転講習を受ける義務が生じます。
自動車の違反者講習を受けたことのある人は分かると思いますが、視聴覚教材などを使いながら3時間くらいみっちり反省させられるアレです。ちなみに受講命令に背くと5万円以下の罰金。
さいごに
ルールの再確認のためにまとめましたが、知ってはいるけれどついついやってしまうものはありそうですね。特に傘差し運転は、危険と分かっていながら、かっぱを着るのが面倒だという理由でしてしまいそう。
しかし、自分のためにはもちろん、罪のない被害者を作らないためにも道交法はきちんと守りたいものです。最悪の事態に陥らないために個人賠責に加入しておくことも大切でしょう。自転車保険で加入しなくても、自動車保険や火災保険の特約として付帯できます。