「ビクトリアが可愛い」だけでは足りねえ。どうしても見劣りする『もっと猟奇的な彼女』のネタバレ感想

公開日:2018/09/10 更新日:2020/05/02

韓国の映画史上最高のラブコメだと胸を張っておすすめできる『猟奇的な彼女』。その続編が、15年の時を経て公開されたというから驚きです。関連作品であることを匂わす程度の作りだった『僕の彼女を紹介します』と違い、明確に世界がつながっている正真正銘の続編。

韓国では不評だったそうですが、自分の目で観てみないことにはわかりません。前作のDVD(誤ってディレクターズ・カット版を購入)を軽く100回は観た僕が、その出来をネタバレ感想で書きたいと思います。

2016/韓国
上映時間99分
監督:チョ・グンシク
脚本:シン・チョル
出演:チャ・テヒョン、ビクトリア、ペ・ソンウ、藤井美菜 ほか

「彼女」があんまり猟奇的じゃないタイトル詐欺

比較してはいけないとわかってはいても、前作の彼女・チョン・ジヒョンの存在感が伝説級に凄かっただけに、今作の彼女であるビクトリアが越えなければならないハードルは高いなんてもんじゃありません。

しかし予想通り、いや、予想を遥かに下回り、ビクトリアは”元カノ”には遠く及ばないという印象。なぜなら、そもそも論として、今作の彼女がまったく猟奇的じゃないから。

前作のような暴力性は引き継いでいるものの、1の彼女のように、放っておくと何をしでかすかわからないヤバさがまったくない。

まあ、元カレが死んで人生ヤケ酒モードになっている1の彼女と、幼い頃に交わした恋の契を一途に守って渡韓してくるような2の彼女とでは闇が違うのですが。

夫が好きすぎて出張先にまで乗り込んでくるとか、別の意味で猟奇的ではあるけれど、根底にあるのはキョヌへの圧倒的な「愛」な訳ですから、よしよし可愛い^_^で済んでしまいます。

一方、前作の彼女は終盤になるまで過去が見えてこないので行動原理がわからない。なぜか執拗に絡んでくる変な女。でも目の覚めるような美人。だから逆らえない……。

わかるかなーこの法則。

それでも今作が見るに耐えるのは、M男をやらせたら世界でも右に出る役者はいないチャ・テヒョンだからでしょう。これを続編として、役者陣が総入れ替えされていたら、僕をはじめ多くの人は見向きもしなかったと思います。逆に言うと、「キョヌ」はチャ・テヒョン以外に考えられない。

ビクトリアの美貌を押し売りされている気分になる

トップアイドルだけあってこの人のビジュアルはずば抜けており、角度によっては微妙に見えることもあるチョン・ジヒョンと違い、いつ・いかなるときでも美しく可愛いです。

しかしそれは撮り方・見せ方の問題もあって、いかにもな衣装に身を包んだ彼女の登場シーンはすべて、映画を借りたファッション・ショーを見せられているような気分になります。

ビクトリアを可愛くないという視力が裏返っている男はいないと思いますが、いたとしたら、あのゴリ押し感ある演出はウザいと感じるでしょうね。

それでも、リン・ミンチェンが可愛いから全部許すとか言っている僕ですから、この映画にも高評価を付けたいところですが、前作との明確な時間のつながりがあるだけに、素直に評価できないのが正直なところです。

ラストで、仏門に入ったはずの1の彼女から電話がかかってくるシーンがありますが、『僕の彼女を紹介します』のチャ・テヒョンのように、ここでチョン・ジヒョンが一瞬でもゲスト出演していたら、逆転ホームランとは言わないまでも相当の盛り上がりを見せたと思います。

さいごに:別物として捉えると悪くはない

1の彼女が出家したという設定について、チャ・テヒョンは、

”彼女”が変わった後、殺さずに引き継ぐには、仕方のない設定だった。

と語っており、新しい彼女(そして妻)が初恋の人というのは、チャ・テヒョンの現実と合わせたのかなと思ったり。

正式な続編ですし、いろいろと比較したくはなるのですが、1とは別物の独立した作品だと心を押さえれば評価は変わります。しかし現実としては、この映画の評価は各国でもかなり低く、「チョン・ジヒョンの方がいい」「ビクトリアの演技がつたない」「チャ・テヒョンが老けすぎ」などと叩かれているそうです。

ファンとしては、そこまで言わなくても……とも思うので、一番好きなシーンを語って終わりにしたいと思います。

それは、酔っ払って帰ってきたキョヌとその同僚ヨンソプ(ペ・ソンウ)へのおしおきに、変な朝ごはんを食わせるところ

なにあのごはんw

興味のある人はどうぞ。

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コウカ(kouka)
ライター事務所「k-note」代表。カメライター、フォトライター、漫画原作者。写真と落書き漫画を交えて文章を書くのが好き。詳細プロフィールはこちら、仕事の実績確認・ご依頼はこちらからどうぞ。

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