職務上、部下を叱る立場にいると、自分はきちんとした「叱り方」ができているのか疑問に思うことがある。
あなたはどうだろう? 感情にまかせて、ただ怒鳴り散らしたりはしていないか?
難しいのはよくわかる。自分の前職でも、部下への指導の仕方に悩み悩んだ末、怒鳴ってしまったり、異常なまでにスパルタになったり、突如奇声を発したり、ふてくされて早退したり、鼻血を流して病弱ぶりをアピールしたりと、日に日に近寄りがたくなっていった上司がいた。
それじゃあ何も生まれない。ここはいっちょう生産的な叱り方とやらを学び、部下と親交を深め、バーベキューやスノーボードに誘われる仲にまでなろうじゃないか。参加したらしたでおもんなさそうだけど。
では、生産的な叱り方とはどんな叱り方なのか? 今回紹介する『叱り方検定』のなかに、その答えが隠されているかもしれない。
叱り方検定とは
叱り方検定は、NPO法人『マザーズサポーター協会』が開催している人材育成セミナーの一つ。部下への指導に頭を抱える上司たちが駆け込む注目の講座だ。
悩める中間管理職からの需要が非常に高く、口コミも合わさって募集後間もなくキャンセル待ちが出るほど人気だとか(定員は30~50名)。
こんな叱り方を心がけて
同検定の公式ページにいくと、セミナーに利用するPDFファイルを閲覧・ダウンロードすることができ、それだけでも目からうろこの内容が書かれている。たぶん。
たとえば、『効果的な「叱り方」を知るためのポイント』として、
・枕詞で思いやりを表現する
・思い込みで叱らない
・「叱る」と「怒る」を区別する
などが紹介されている。枕詞での思いやりとは、叱る前に、
「この件はちょっと難しかったかな~?^^」
等と一度クッションを置いてあげることだ。これを見て、日本テレビ系列のバラエティ番組・『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』のハガキトーク(視聴者からの無茶ぶり質問に松本人志氏が即興で答える)で、
「ワキガの友人が傷つかないようにワキガであることを伝えるには何て言えばいいですか?」
という質問に対して、松本氏が「思いやりや共感を表す枕詞を付けてやるといい」とし、
「俺もワキガなんやけどな」
と回答していたのを思い出しました。さすがは松ちゃん。笑いのツボを抑えつつ効果的な指摘の仕方も身につけておられる。
思い込みで叱らないことも非常に大切。たとえばよくミスをやらかす部下に、「どうせお前また……」などとミスの原因を決めてかかったりはしていないか。
ミスの原因はミスをした本人に自覚させる必要がある。
結果的には誤りだったとはいえ、そこにたどり着くまでの思考や作業の過程がある(適当にやっていない)のであれば、それはきっちりヒアリングしてあげよう。でないと、上司の思い込み発言で部下が萎縮してしまい、根底に潜んでいる解決すべき問題を見つけることさえできない。
ちなみに、私自分が知る限り最悪の思い込み叱りは、「webサイト」という言葉を使ったweb担当者に対し、社長夫人が
「ちゃんと『ホームページ』と言いなさい!」
「あなた私がインターネットに疎いと思って!」
「専門用語ばかり使って煙に巻くつもりね!」
と激怒した例だ。思い込みの次元が違う。自分は遠くからそれを見ていただけだが、心の底から不憫に思ったものだ。
さいごに
なぜ叱ることがそれほど難しいのか、一つは感情のコントロールだと思う。「叱る」と「怒る」は区別がつかなくなりがちだ。
怒るのは「自分のため」であり、叱るのは「相手のため」である。
ただ自分の感情を解放させるのと、相手の成長を願い、誤りを正してあげることは大きな違い。叱り方検定が、この位置づけをしっかりと認識させてくれる講座かどうかはわからないが、興味のある人は受けてみてもいいと思う。上司-部下だけでなく、親子関係にも通じるところがあるので、子育て中の人にも役立つかもしれない。
自分は、「フリーランスでいいや」と思っているので受けないけれど。