何を隠そう、僕は昔、風○新聞や雑誌を作る出版社で働いていました。といっても、たった1ヶ月間で使用期間中に辞めましたけどね。理由はもちろん「合わなかったから」です。
そもそも、なぜそんな(自分にマッチしてない)会社を受けたのかというと、ものすごく焦っていたのだと思います。当時はまだライター未経験だったこともあり、求人広告に“未経験OK”と書かれていれば片っ端から受けていました。
だから面接で、
「未経験OKと書いていますが、そういう方にはまず営業をやっていただきます」
「また経験者であっても、男性にはやはり営業を経験していただくことがあります」
「営業を通して業務を理解することで、より違った制作物ができたり、クライアントに提案できたりするのではないでしょうか」
なんてオカシなことを言われてもまったく疑いませんでした。
制作部をチラッと覗くと、基本的には女性ばかり(しかも美人)。結局、夜の広告を作ってるから男を内勤にさせたくないだけだと、今なら見抜けますが、当時はチャレンジ精神を爆発させ、
よーし、やったろうじゃねえか!
という気になってしまいまして。とにもかくにも、それからこの会社を退職するまで、ある意味天国・ある意味地獄の1ヶ月間が続きます。
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基本的な1日のスケジュール
・朝
クライアントの特性もあり出社は11時30分。ほとんど昼ですね。その後、30分間の朝礼をし(絶対契約取れよオラァ!!的な)、終わったらランチタイムです。お弁当が届くのですが、結構ボリュームがあって美味しく、出社する唯一の楽しみになりました。
・昼
教育担当者(部長)が仕事内容の説明に来るまで、新入社員は「業界研究」の名のもとに風○新聞や雑誌を読みあさります。そうですね、ざっと3時間ほど。
それ以外は一切やることがありません。
初めは「これも自分が選んだ道だ」と思い、デザインや表現手法などを学ぶつもりで読んでいましたが、卑猥な写真と、「最高に良かったゾ」「気持ちいいゾ」といった表現が頻出するのを見て心が折れました。
・夕方
さすがに飽きてくるので新入社員同士で遊び始めます。早々と転職を決めた同僚の職務経歴書のPR文を考えてあげたり、出会い系サイトを楽しむSさんという人の隣でメールの返信文を考えたりと、和気あいあいと楽しむと共に仲間の結束を固めていました。
・夜
「待たせたね」と部長がやってきて、1時間ほど勉強会が開催されます。業界の歴史、法律関係、コミニュケーションのコツ等々…。定時(20時くらい)まで続き、終了後に退社。ほぼ何もしていないはずなのに、自宅に戻ると謎の疲労感が襲ってきます。
「手配り」という名の地獄業務
毎日が放置プレイという名の自習時間で1日が終わる我々新人スタッフでしたが、たまには外に出て仕事を命じられます。
それが『手配り』という仕事でした。ずっと事務所にこもって業界新聞や雑誌ばかり読んでいるので、外の空気を吸えるのは嬉しいのですが、これ、通行人の女性に自社の風○求人誌を配ってクライアントの先の「働き手」を増やそうという趣旨なんですよね。
求人誌は一見、他の女性誌と変わりなく、イロの世界とは無縁そうな女性が勘違いして貰ってくれるのですが、その度に僕は、
(これも仕事……貴女を騙すつもりは決してなかったんだ……)
等と心の中で懺悔していました。そういえば、手配り中に女友達にばったり出くわしたこともあったなぁ。それはそれでちょっと笑えたので2〜3冊渡しましたが。
これを、出社から定時まで約8時間実行。
正社員としてクリエイターをめざしている僕が、よもやこんなところで手配り8時間。…傑作だ。…喜劇だ。
手配りに駆り出される回数が増えるたびに同僚が減っていき、当初は10数名ほどいた同期仲間は気がづくと半分ほどになっていました。僕もそのままいると画像のドリアンみたいに狂ってしまう恐れがあったので、明確に退職することに決めました。
退職前に「広告に出ないか?」
射○産業からの脱却を決意して以来、僕は勤務しながら水面下で転職活動を行い、幸運なことに1社目で採用が決まりました。さあ!勇気を振り絞って言うぞ……。
僕「退職します」
部長「あー…いいよ」
へ??
意外や意外。いとも簡単に許しを得ました。
僕が営業マンとして期待されていなかったせいかもしれませんが、それだけ離職する社員が多いということなんですよね。僕が言い出す前にも役職クラスを含む社員数名が一斉退職したりと、なんかもう日常茶飯事の様子。要するに、みんなこの業界で働いている自分に漠然とした不安を抱えているのでしょう。
さて、晴れて退職が決まり、健やかな気分で残り少ない放置プレイ勤務を満喫していたある日のこと。朝礼が終了するやいなや、先輩営業マンと編集部のカメラマンがニコニコしながら近寄ってきました。
先輩「誰か今日ヒマな奴いるか?」
新人全員「?」と首を傾げます。同時に、なんとなくヤな予感が……。
先輩「今日ある店の体験レポートの取材に行くんだけど」
先輩「誰か一人、レポーター役になって編集記事に出て欲しい」
カメラマン「めっちゃ楽しいぞ~」
……これを受諾するということは、己が半裸になってフー○ク嬢と戯れているところを、○ーゾク新聞に顔写真付きで堂々と掲載・販売されることを意味します。
もちろん、全員一致で断固拒否。
ネタとしては面白すぎますが、もはや親に会わせる顔がなくなります。しかし、先輩に指名されれば露骨にイヤとも言えません。全員が目をそらし、うつむき加減になっていると……
「俺がやります」
満面の笑みを浮かべて言い放つ男がいました。その勇者こそ、勤務中に出会い系サイトを楽しむ男・Sさんです。
彼は、あるホストクラブが気に入らないからといって、その店のトイレに不法侵入し、己の糞尿とトイレットペーパーの芯を大量に便器に流し込み、その店にあるすべてのトイレを再起不能にしてトンズラをかましたという伝説を持つお人です。
またあるときは、ゲイを対象としたビデオに出演し、カメラに向かって自○行為をやってのけることによって幾らかを手にするという、もはや雄としての役割を超越したアルバイト経験も持つ強者中の強者です。
Sさんにかかれば、フー○クレポートの一つや二つは朝飯前。さぞや素晴らしい記事になるだろうと、僕はその新聞の発売を楽しみにしていました。
発売は2週間後。そのとき、僕はめでたく退職していました。そして、Sさんの蛮勇ぶりを確認すべく風○新聞を購入すると……
そこには、満面の笑みで女性と戯れる、下半身がソープまみれのSさんが映っていました。
あの会社で出会った同期の皆さんとは、もうお会いすることはないでしょうが、元気でやっておられるでしょうか? 特にSさん。あなたは本物の男でした。僕はあなたのイキ様を見習い、今も一生懸命働いていますよ。
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