大阪朝高生の青春とアイデンティティ。映画『60万回のトライ』のネタバレ感想

大阪朝鮮高級学校(大阪朝高)のラグビー部に焦点をあてた長編ドキュメンタリー。

ドキュメンタリーということで創られた演出はなく、ただ彼等の「目指せ全国制覇!」までの道のりを記録しているのですが、在日コリアン、なかでも日本では色眼鏡をかけて見られがちな北朝鮮をバックグラウンドに持つ彼等の素顔や思想は興味深く、同じ在日コリアンとはいえ、日本の学校に通った僕には新鮮でした。

最も印象に残っているのは、大事な試合前の儀式で「60万同胞の夢〜!」等と叫びながらサンドバッグにタックルするシーン。ちょっと鳥肌が立ちました。あんなことしてるんだ、と。

この映画のタイトルが、60万回という中途半端な数字なのは、在日同胞60万人のための、という意味があったんですね。

2014/日本  上映時間106分
監督:朴思柔、朴淳史
出演:大阪朝鮮高級学校ラグビー部 ほか

2010年4月。高校ラグビー春の選抜大会決勝。大阪朝鮮高級学校は、最強の王者・東福岡高校を雨の中で追いつめていた。同点で迎えたロスタイム、あと一歩で両校優勝。初優勝のはずが、大阪朝高はあえて闘い抜くことを選び、結果、敗れてしまう。だが部員たちは、そこから再び“全国制覇”の夢へと向かい始める。猛練習を積み重ねる日々を送る主将ガンテたちは、高校授業料無償化からの排除、地方自治体の補助金停止などの現実にも直面する。2010年12月。怪我から復帰したガンテを先頭に大阪朝鮮高級学校ラグビー部は、全国大会「花園」に臨むが、初戦でエースのユインが脳しんとうで退場。夢への挑戦にまたしても苦難が待ち受ける……。

 



正直な感想は50点

ドキュメンタリーではあるものの、物語の構成がある限り、もちろん、単なるスポ根では終わらないわけで。高校無償化問題をはじめとした政治問題や、差別問題を含む在日コリアンとしてのアイデンティティなど、真に訴えかけたいことが要所要所で散りばめられています。

非常に感動的で面白く、部活動に一所懸命な高校生ラガーマンたちが可愛くて仕方ない一方で、スポ根に絡めた政治問題の提起等は、正直「もういいよ・・・」と思うことも。

橋下府知事(当時)の言い分は、あれはあれで筋が通っていると思うし、記者会見の席で朴監督が、「朝高ラグビー部が大阪代表として活躍したけどどう思われますか?」と、情に訴えかける(?)みたいなシーンがありましたが、そんなことで決定事項を覆す政治家がいたら、そっちの方が問題だと僕は思います。

大阪朝高を訪問したその日に補助金廃止を決めた→このひとでなし!みたいな誘導にも違和感あり。

また、キャプテンのガンテ君が語った、ラグビーはNo Sideの精神。結構なことですが、そんな甘っちょろいことが通じないのが政治。だからスポーツは神聖だし、神聖なスポーツのなかに政治を持ち込んではいけないんです。

在日社会が抱える問題と、ラガーマンたちのスポ根物語は、もう少し切り分けてくれる方が見やすかったなと。

 

あとビラ配りですが、あれってホントに自主的にやってるの??上の人とかにやらされてるんじゃないの?と思ってしまったり。同胞をキャンプに誘う勧誘活動に関しては、少なくとも僕のウリハッキョ出身の友達は、「面倒なのでやったことない」だそうです。

ツボだったのは、朝鮮語と日本語のちゃんぽん。あれは、使いどころが絶妙すぎて笑いました。「目指すは優勝イムニダ!」とか(笑)。ウリハッキョならではの文化だと思います。

ともあれ、不満を言いながらもホロリときましたし、僕も学生時代ラグビーをやっていたこともあって、なんか血が騒ぎました。今やってもケガするだけなのでやりませんが、タッチフット(タッチされたら攻守交代)くらいならやりたいなあと。

出演者が働いているという焼肉屋へ

この映画、周囲の在日コリアンの友達はほとんど観てないのですが、韓国好きな日本人の人は観たという人が多く、その中の一人がえらく感銘を受けていました。勢い止まらず、ある日「サンヒョン君の働く焼肉屋に食べてに行こう!」とまで言い出しました。

サンヒョン君とは、主将ガンテ君に代わって大役を務めた、チームのムードメーカー的存在だった子です。高校卒業後は大阪の焼肉屋で正社員として頑張っているとか。上映後に朴淳史監督が語ってくれた話によると、彼がいないと店が回らないくらい重要な人物に育っているとのこと。

というわけで、先日ホントに行ってきました。

芸能人じゃないですし、勤務中ということもあって会話らしい会話はしていませんが、ひじょ〜に紳士的な店員さんでした!お肉も美味しくて超満足です。

さいごに

そういえば、映画を観て思ったのは、「やっぱり在日の顔って似てる!」です。登場人物すべて、知り合いの在日誰かと系統が同じなんですよね。そりゃ日本人でもそうだろ、と思うかもしれませんが、そんなレベルじゃなく、兄弟みたいに似てるんですよ。

バリエーションが結構少ないのでしょうか。だからよく「君って在日顔だな」とか言われるし、言いたくなるのかな。。。単に分母が少ないの問題だけじゃないような気がします。

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コウカ(kouka)
ライター、カメライター、漫画原作者。写真と落書き漫画を交えて文章を書くのが好き。瞬発力だけで生きている。

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