「朝鮮飲み」なんてしない? 日本人が誤解していそうな在日コリアンの5つのこと

公開日:2014/07/05 更新日:2020/06/03

先日の号泣記者会見で野々村議員がやった水の飲み方が、朝鮮半島式の作法だとして一部話題になりましたが、その認識は誤りだとする意見も注目を集めているようです。

美味しんぼがソースで話題の「朝鮮飲み」はデマなのか? – Togetterまとめ

まとめられているように、片手で口を隠して飲む作法はお酒を飲むときに行うのが一般的で、目上の人が周囲にいる場合だけです(年上でも仲のいい人はOK)。正式には水を飲むときにも行うのかもしれませんが、僕は聞いたことがないし、やっている韓国人も見たことがありません。

野々村氏のルーツがどこにあるのかはともかく、今回の件で再認識したのは、「在日コリアンってやっぱり誤解されてるなー」ということ。もちろん在日といっても幅広いのですが、少なくとも僕の感覚では、1世(または2世)からの「祖国のあれこれ」を受け継いでる人なんてほとんどいません。韓国についてまったく知らないどころか、関心すらない人もたくさんいます。韓流ブームを機に日本人の方が詳しい人が増えたかも。

いい機会だと思うので、僕や僕の周り、これまで出会ってきた人々を平均化して、日本の方が在日コリアンに抱きがちな誤解を5つ挙げたいと思います。

1、韓国語はできない

Very Amateurish Hangul Calligraphy
Very Amateurish Hangul Calligraphy / johl

北朝鮮系の学校に通った人はともかく(原則日本語禁止なので)、普通に日本社会で生きてきた人なら、韓国語は十中八九できません。

イモ(母方のおば)とかハルモ二(おばあちゃん)とかオッパ(お兄さん)とか、親族の呼び名だけはなぜか韓国語で言うことが多いため、単語単語で知っていることはありますが、言語として自然にマスターすることはありません。2世ですら、「親の言っていることしか理解できない」という人も多いんですよね。関心のないレベルになると、韓国・朝鮮人を蔑むときに使う「チョン」という言葉を蔑称だと知らずに使うほどです。(「誰々はチョン高出身で〜」とか)

したがって、韓国語がペラペラな在日コリアンは、自分の意志で、親以外の誰かに学んだ人がほとんでです。もちろん在日コリアンだからといって韓国語のセンスがあるわけではなく、母国語が日本語である限り日本人とスタート地点は同じです。僕の周囲ではむしろ日本人の方が上手いかも。

2、韓国料理はたまにしか食べない

これは家庭により結構さまざまですが、常に食卓に赤いものが並ぶわけじゃありません。そりゃ日本の家庭よりは多いとは思いますが、基本的には日本食です。したがって食事マナーも日本式。箸やスプーンは横に並べますし、食器は持って食べるよう教えられます。逆に、韓国料理の食べ方や作法を知らないという在日コリアンの方が多いかもしれません。

【参考】
韓国の食文化 | 食習慣・食文化 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」

野々村議員が疑われたお酒(水)の飲み方ですが、在日コリアン同士では基本やりませんし、そんなことをもし目上の人に指摘されたらえ  ∑(・Д・・)」ってなると思います。そういえば、『かぞくのくに』という映画でも、平壌から帰国してきた兄(井浦新)に対し、妹(安藤サクラ)が「日本ではこれでいいんだよ」と父親の目の前で堂々とビールを飲み干すシーンがありました。(※1分47秒くらいです)

もっとも、年配の方や、民族団体のお偉いさんなどは、いろんな意味で国を意識しているので、こういうマナーにはうるさいでしょう。ですが一般レベルの在日コリアンは、日本のコミュニティのなかで、ついその動作が出てしまうほど身に付いている人はそういないと思います。

3、韓国・朝鮮が好きというわけではない

3世以降は特にそうですが、自分のルーツに興味がないという人は多いです。日本で生まれ、日本の学校に通い、日本人の友達と遊び、日本のメディアを見て育っているのですから、まあ当然といえば当然です。

僕の周囲は特にその傾向が強く、親戚で韓国に興味があるのは僕一人。むしろ報道などを通して韓国が嫌いだという身内もいます。気持ちは分かりますが、聞きかじった情報だけで全否定する人も多くて、それはそれでどうかと思いますがーー;

なお、民族学校に通った人は、さぞかし民族意識が高いと思っていたのですが、実際に友達になって話してみると全然そうじゃありません。ただ親に通えと言われたから通っただけで、否定的な見解を持つ人の方が多いイメージです。もちろん一定の帰属意識はありますが(スポーツだけは韓国を応援したり)、日本の人が思っているほど「ウリナラマンセー」ではないということです。

4、昔から韓国人だと自覚しているわけでない

ある程度の年齢まで、自分のことを日本人だと思って生活してきた人もなかにはいます。親が教えなかったんですね。昔嫌な思いをしたとか、理由はいろいろあるでしょうが、ある日突然「実はうち韓国人なの」と明かされるのですから、まさに青天の霹靂です。

kedi
kedi / jenny downing

精神的に成熟してたらいいですが、多感な時期にそんなヘビーなことを告げられても混乱するでしょう。僕の周りにも、ある日親に真実を告げられ、認めたくなかったのか、結構な韓国嫌いになった人がいました。逆に、それを機にバリバリのプロ市民に変貌する人もいます。そういう人に限って価値観を押し付けてくるので非常に迷惑なのですが……。

5、韓国名では呼び合わない

「家ではなんて呼ばれてるの?」とたまに聞かれるのですが、我が家では日本名です。というか、韓国名はほぼ使ったことがありません。在日コリアンは、

  1. 韓国でも通じる韓国名を持っている人
  2. 日本名をただハングル読みする人(例:美香→ミヒャン)
  3. 両方とも持っている人

の3種類が一般的ですが、圧倒的に多いのは2番で、民族学校や民族団体で友達にならない限り、ハングル読みで呼び合うことは少ないんじゃないかなと。

そういえば以前、在日コリアン同士のレクリエーションの勧誘で、スタッフが自宅に訪ねた際、出てきたお父さんに

「○○(←ハングル読み)さんご在宅ですか?」

「……誰のこと??」

と返ってきたのには笑いました。こういうお宅が結構あって、本当に家じゃ使わないんだなーと思いました。

終わりに

あくまで僕の経験を平均化したものなので異論もあるかと思います。まあ言いたかったのは、特別に意識している人を除いて日本の人と変わらないということです。世代が進むにつれこの傾向は強くなるでしょう。在日○世なんて括りも消滅すると思います。3世の僕としては、それが自然な流れとは思いつつ、多文化共生という意味では寂しい気もするのですが。

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コウカ(kouka)
ライター事務所「k-note」代表。カメライター、フォトライター、漫画原作者。写真と落書き漫画を交えて文章を書くのが好き。詳細プロフィールはこちら、仕事の実績確認・ご依頼はこちらからどうぞ。

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