アウトレイジビヨンドの予告があまりに面白そうなので前作を拝見。
2010/日本 上映時間109分
監督:北野武
脚本:北野武
出演:北野武、三浦友和、椎名桔平、加瀬亮 ほか
関東一円を支配する巨大暴力団・山王会。そのトップである関内は、傘下の池元組が麻薬を扱う村瀬組と兄弟杯を交わしていることを快く思っておらず、若頭の加藤に「村瀬を締めろ」と指示を出す。加藤から命令された池元は兄弟分の村瀬に手を出すわけにもいかず、仕方なく配下の大友組に村瀬組と締めるよう指示。これがすべての引き金になり、ヤクザたちによる騙しまだされの連鎖が始まる。
「バカヤロー」
「てめー この野郎」
「殺ってやんぞバカヤロー」
「ケンカ売ってんのかコラァ」
「殺すぞ」
まぁテンポ良く罵声を飛び交わせる役者たち。それぞれが主役級でヘビー級。
キャッチコピーは全員悪人。
悪人共がそれぞれの野心をフル解放し、保身と下克上を繰り広げる物語です。
全員悪人には違いないですが、すべてが極悪ということではなく、悪人レベルのランク付けはすることはできます。
ハナッから真っ黒な悪のイケイケ派、頃合いをみて悪のリミッターをはずす堅実派、そしてただ使われて捨てられるだけの弱者・敗者。
たけし演じる主役の大友は、最後のカテゴリーに分類されます。彼は上からの命令を聞いていただけですから。大友組若頭の水野(椎名桔平)も、ヤクザとしての実力はありますが同じ部類。村瀬組若頭の木村も同様です。そこでちょっと、登場人物の悪人度を分類してみました。
格付け
・最初から悪人の外道中の外道
関口(山王会会長)/北村総一朗
片岡(マル暴)/小日向文世
池元(山王会池元組組長)/國村 隼
・途中から悪の心を解放
加藤(山王会若頭)/三浦友和
小沢(山王会池元組若頭)/杉本哲太
石原(山王会大友組幹部)/加瀬亮
・馬鹿とハサミは使いよう
大友(山王会大友組組長)/ビート・たけし
水野(山王会大友組若頭)/椎名桔平
村瀬(村瀬組口組長)/石橋蓮司
木村(村瀬組口若頭)/中野英雄
・たたの使えないチンピラ
飯塚(村瀬組口組員)/塚本幸治
こんな感じでしょうか。
●関口と加藤
山王会会長の関口は、子分をハナクソのように扱う最低最悪の男。調子に乗って加藤のフサフサ頭をバシバシ叩くから、根に持った加藤に撃ち殺されます。しかし親殺しはヤクザの世界で絶対の御法度らしいので、それを野心だけで実行に移した加藤も相当なヤツです。決してアタマが切れる男ではなく、ただ禁じ手を使って頂点に登った男という印象。
●池元
池元は最初から大友と村瀬をいいようにアゴで使う男。彼も関口会長の命令に従っていただけといえばそうなのですが、「やらされている感」を感じさせないのがこのキャラの良いところ。むしろ人をおちょくるのを楽しんでいるように見えます。もっとも、破門した子分のシマに遊びに行くとかフツーに馬鹿な行動をとることから、何も考えていない可能性もあります。
●片岡
片岡刑事を演じる小日向文世さんは個人的にとても好きな役者さんで、もうなにやっても素敵。ヤクザの周りを調子よくフラついて金をせびる子悪党なのに素敵です。
片岡は大友のボクシング時代の後輩で、取り調べ室で大友にあっさり敗北するシーンがありますが、そうかと思うと突然ワンパンを放って大友を黙らせたりと、ちょっとよくわからない面もあります。片岡ならではの駆け引きだったのでしょう。そんなところもまた魅力。
●小沢
大友組を滅ぼし見事に親の仇を撃ってみせるも、加藤にあっさりと殺られて作中全体ではいいとこなし。
小沢のシーンで好きなのは水野と対峙する場面。組長の池元が大友のカジノで殴り倒され別室に連れていかれるのを阻止しようしたところ、水野に「叔父貴の顔必ず立てますからここは黙っててください」と言われ、あっさり納得して引き下がるシーンが個人的にツボです。小沢は小沢で池元の二枚舌に嫌気がさしてたんだなあと。
●石原
今作では最後にちょこっと裏切っただけでキャラの詳細はあまり分かりませんが、姑息で男らしくないインテリヤクザですね。水野が殺される際の言づてで、「石原がよろしくって言ってたぞ」「なんだとお!」みたいなシーンがありますが、やっぱり突然殴られたの根に持ってたんですね。でもあれはヒドイと思った。
●飯塚
本当にただのチンピラであっさり消されるので、この役この人でなくても良かったのでは、とさえ思いました。ファンから見れば残念な役でしょう。
●大友
最後に大友です。利用され続け子分も失った大友が最後になぜ出頭したのか? ちょっとよく物語が見えていません。次回作の予告をみると復習するつもりもなさそうだったし。ただ心が折れたのでしょうか。だとしたらかなり情けないラストになってしまうのですが……。
とにかく今はビヨンドが観たくてたまらない!!