現在開催中のシッチェス映画祭にて、2013年、香港で大ヒットを記録した『Rigor Mortis(リゴル・モルティス)』を観てきました。直訳すると「死後硬直」。そう、あのキョンシーですよ皆さん!!
2013/香港 上映時間102分
監督:ジュノ・マック
プロデューサー:清水崇
出演:チン・シュウホウ、アンソニー・チャン、チェン・ファ ほか
キョンシー映画へオマージュ「リゴル・モルティス」が好調、「霊幻道士」俳優が主演―香港 – エキサイトニュース
80年代後半に大ブームを巻き起こした、あのアクションホラーコメディが蘇ったんです。メガホンを握ったのは、香港出身の歌手兼俳優のジュノ・マック氏。プロデュースは『呪怨』や『富江』で知られる清水崇氏。
そして主な役者陣は、当時の俳優!……で他界していない人。
一応解説:キョンシーとは?
キョンシーとはなんぞや?という90年代以降の方は、Wikipediaを貼り付けるので5回くらい音読してください。
キョンシー(繁体字: ?屍; ピン音: ji?ng sh?; 粤ピン音: goeng1si1)とは、中国の死体妖怪の一種。硬直した死体であるのに、長い年月を経ても腐乱することもなく、動き回るもののことをいう。広東語で キョンシー、北京語音でチャンシー。日本語の音読みで「きょうし」。
平たく言えば中国版ゾンビや吸血鬼のことです。両手を前に付きだしてぴょんぴょん跳ねるのが特徴。ただしラスボス系は、死後硬直に打ち勝ったのか、ドタドタ歩いてくる個体もいます。
このキョンシーを退治する映画が日本で大ヒットしたんですよね。ブームの火付け役となった『霊幻道士』(香港)、その亜流ではあるものの、日本中の小学生男子を虜にしたテンテン(シャドウ・リュウ)が登場する『幽幻道士』(台湾)が有名です。
テンテンをはじめ、同年代の少年たちが活躍する幽幻道士も好きでしたが、僕は圧倒的に霊幻道士派でした。大人が主役ということもあって、アクション(カンフー)や法術に迫力があるんですよ。華麗な足技でキョンシーを蹴り倒す道士に憧れて拳法を始めたし、神様の力を借りて発動する法術は、かめはめ波と違い、「修行すればできるかも」とまで思わせてくれました。
それにしても、邦題がキョンシーとは、清々しいほどのド直球を投げてきてくれたもんです。『空飛ぶキョンシー』とか、『キョンシーの七不思議』とか、本編にほとんど関係のない邦題に慣れ親しんできた僕にはいささか違和感を覚えますが、霊幻シリーズで活躍していた俳優陣が出演しているというなら、邦題なんか関係ありません。
文字通りオチで引っくり返る
あらすじはこんな感じ。
大ヒットホラー映画に出演してスター俳優として活躍したものの、今では落ち目になった上に妻子とも別れてしまったチン・シュウホウ(チン・シュウホウ)。全てに絶望した彼は、幽霊が出現するとささやかれる団地の2442号室へと入居する。そこを死に場所にしようと考えていた彼だったが、壮絶な過去を背負って生きる子連れの女性、空の棺桶(かんおけ)に固執する不気味な老女、霊幻道士といったさまざまな住民と出会う。やがて団地内にキョンシーが出現し、チン・シュウホウは彼らを相手にした戦いに引きずり込まれていく。
キョンシーといえば、コミカルな内容で子どもから大人まで親しみやすい作風でしたが(特に霊幻道士4(完結編)は異常なまでにコメディ寄り)、同作ではコメディ要素を一切排除。究極のサスペンス、スリル、アクション、バイオレンスを追求した、おしっこちびれる作品に仕上がっています。
予告編を観ればホラこの通り。
こちらは香港で公式(?)に公開された幽霊とのバトルシーンの一部。これを見てテンション100倍に上がりました。(流血注意)
まさにジャパニーズホラーとの融合。この後、チェン・ファとアンソニー・チェンの2人の道士が協力して霊を封じ込めるのですが、まさにこれ!こういうのが見たかった!!という作中一のシーンに仕上がっています。
他にも身を乗り出して見てしまうような良シーンや演出があり、ストーリー・キャラクター設定共に不満はないのですが、この一連の出来事が、チン・シュウホウが最期に見た「夢のような走馬灯だった」というオチはやっぱりいただけない。
夢オチのなにが罪深いって、鑑賞後にあれこれ思いを巡らす気が失せるんですよね。愛する夫を生き返らせたい一心で邪法にすがった老女に同情する気も起きない、その生贄になった子供を可哀想とも思えない、キョンシー退治で片腕を失った道士の今後の生活も気にならない。だって、どうせ夢だったんだから。
「色即是空、空即是色、すべてこの世は夢幻よ。目を覚ませばすぐに解決、かーつ!!」というチェリーのセリフ(うる星やつら:ビューティフル・ドリーマー)が脳内を駆け巡ります。
というわけで不満
そもそも、チン・シュウホウがなぜあんな夢を見たのか?を少しでも説明して欲しい。エレベーターの中で仲睦まじいパクとその母親を見て妄想を膨らませたのでしょうか。
食堂でサボってどやされてるだけのアンソニー・チェンが、チン・シュウホウのなかで道士となった理由は?生前は出会っていない医師のチェン・ファがなぜ邪道士に……?
モヤモヤするばかりですが、どうせ夢オチなので考えるのも虚しい……。賛否両論分かれる映画だと思います。